夢日記。檻の中
イメージしてみる。
とある屋敷の一室。
檻に閉じ込められた、また年端もいかない少女がいる。
少女は奴隷だ。昨日までは孤児だったが、奴隷商に捕まった。
与えられたのはボロ布のような衣服と、この首にかかった大きな鉄輪だった。
だがそんな状況に置かれても、少女の心は静かだった。
自分でも不思議なくらい、なんの感情も湧いてこない。
当然と言えば、当然のことだ。
期待なんてしていなかったのだから。
ずっと前から、この命の行く末になど。
少女は物心ついた時から一人だった。親の顔も知らない。
飢えをしのぐためにゴミを漁る日々だった。
そう考えると、まだマシなのかもしれない。
自由を奪われ、奴隷になり下がっても、
雨風を凌げる屋根があるだけ、まだこの場所の方が。
皮肉もここまでくると乾いた笑いがこみ上げてくる。
少しだけ寒くて、顔を膝のなかに埋もれさせた。
もう何も考えたくなかった。そのまま泥のような眠りに落ちるはずだった。
頭上から、その声がしなければ。
「なんだお前、ガキか?」
顔を上げると、檻のまえ。
赤い髪の見知らぬ女が少女を見下ろしていた。
ガタガタと音のする方をみれば、開け放たれた窓から風が吹き込んでいる。
女が屋敷の関係者でないことは、その動きやすそうな装いからも明らかだった。
「へぇ」
やがて品定めを終えたか。
これは面白いものを見つけた、とでも言うように女は笑う。
そして女が発した次の言葉が、少女の運命を大きく変えた。
「おまえ、私と一緒に来るなら助けてやるぞ?」