夢日記。実家から追い出された魔女の話
夢日記。
実家から追い出された魔女の少女。
まず試したのは転移陣の痕跡を探ること。
少しでも痕跡が残っていれば、それを逆引きすることで転移元に帰れるかもしれない。
だがそこは母もさるもの。痕跡と言えるものはまったく残っていなかった。
ならばと少女は今度、杖を呼び出す。
こうなったら自分で陣を形成して、無理やりにでも帰ってやろうと。
転移魔法は大人でも難しい。自身の転移は特にだ。
だが一か八か、やってみるしかなかった。
どうしても家に帰りたい。だってまだ子どもだ。年頃なのだ。
まだまだ親のすねをかじってぬくぬくしていたかった。
だがそんな泣きの一手も弾かれてしまう。
あと少しで成功するところで、ぶつりと遮断されるような感覚があった。
少女ははっとした。
恐らくは母が、そうはさせないと少女の魔法を妨害したのだろうと。
「母よ、そこまで私が憎かったか!」
空に向かって吠える。
返ってきたのは遠くから、獣のような遠吠えだった。
少女は改めて自分の置かれている状況を知った。
今は夜で、ここは野生の真っただ中。
下手なことをすれば、妙なものを呼び寄せてしまうかもしれない。
遠くにいくつか明かりが見える。もしかしたら人が住んでいるのかもしれない。
ほかに頼れる者もない。少女はおずおずと歩き出した。